
商品PRのSNS投稿をする時、きちんとそれが企業から依頼されたPRであることがわかるようにしていますか?実は、そういった口コミマーケティングにおいて、きちんと守るべきルールを定めた「WOMJガイドライン」というものがあります。インスタグラムの流行に伴い、インスタグラマーが数多く生まれ、PRや口コミの投稿も増えてきている今、インフルエンサー自身の身を守るためにもガイドラインが果たす役割は大きくなってきています。今回は、2017年12月に最新版に改定されたWOMJステマ防止ガイドラインについて解説します。
WOMJは健全な「クチコミマーケティング」を推進する団体
WOMとは、英語の「word of mouse」の略で、日本語でいう「クチコミ」のことです。SNSが浸透し、クチコミによるマーケティングが盛んに行われている背景を受けて、2009年7月にWOMJ(WOMマーケティング協議会)が発足しました。さまざまな法人・個人が会員として参加しており、ステマややらせなどの問題が起こりやすいクチコミマーケティングの健全な実施・普及のために活動をしています。
活動内容は、主にクチコミマーケティングについての調査・研究・協議などで、そのうちの一つが、今年5年ぶりに改定された「WOMJガイドライン」の策定です。
WOMJが定める「WOMJガイドライン」って何?
WOMJガイドラインは、クチコミマーケティング(WOMマーケティング)が健全に行われるためのルールを定めたものです。インフルエンサーが企業の広告やプロモーションに協力する際、金銭・物品・サービス等の提供があった場合は「関連性の明示」が必要であることなどが盛り込まれており、情報を受け取る一般の消費者が騙されたりすることなく、正しい情報をきちんと知ることができるように考えられています。
2010年3月に初めてガイドラインが策定されてから、2012年12月に改定されたものが最新版でしたが、今回2017年12月に新たに改定が加えられました。資料はこちらからダウンロードできます。
WOMJガイドライン(2017年12月4日リリース):https://www.womj.jp/85019.html
WOMJガイドラインの目的
ガイドラインの目的には、クチコミマーケティング(WOMマーケティング)の健全な発展や、消費者が正しく情報を知る権利の尊重が定められています。これに加え、2017年の改定では「インフルエンサーが正しく情報を発信しないことにより社会的信頼を失うことを防止する」という内容が加えられました。ガイドラインに違反するような行為はインフルエンサー自身が信頼喪失などの実害を被るリスクを負っています。しかしインフルエンサーもまた一人の消費者であることから、社会的信頼を失うことはWOMJガイドラインが防止していくべきだという考えです。
WOMJガイドラインの「関係性の明示」とは?
インフルエンサーが企業の広告・プロモーションに協力する場合は、「関係性の明示」が必要です。関連性とは、クチコミ投稿をする場合に金銭や物品、サービスの提供などを受けているかどうかを表すもので、WOMJガイドラインでは純粋なクチコミと、便益を受けているプロモーションとを区別するために明示が義務付けられています。
具体的には、「誰に協力しているのか(主体)」と「どんな恩恵を受けているのか(便益)」を示すことが望ましいとされ、投稿内への記載やハッシュタグ、インスタのスポンサード表示機能などSNSの機能を使うことも可能です。
ただし、口コミ投稿が目的となっていない場合や、金銭などの便益を受け取っていない場合など、明示が不要とされるケースもあります。
インフルエンサーなら理解しておきたい「WOMJガイドライン」のポイント
2017年の改定のポイント3つ
1.改訂版はインスタを意識
特定の有名人やブロガーが情報発信をしていた時代から、誰もがインフルエンサーへとなり得る時代へと変化したことを受けて改定に至ったという今回のガイドライン。特にインスタにおけるインフルエンサーマーケティングの流行が意識されています。
2.インフルエンサー側の保護も追加
今回の改定では、業界の健全な発展や情報受信者を保護するためだけではなく、情報発信者であるインフルエンサー自身が社会的信頼を失うことを防止する目的が加えられています。一方で、ガイドラインに違反するような行為によって、インフルエンサー自身が社会的信頼を失いトラブルになるリスクがあるということもまた、しっかりと理解しておかなければいけません。
3、関係性の明示はより柔軟に
企業の広告やプロモーションに協力する場合、「関係性の明示」が定められています。今回の改定では、その関係性の示し方について、簡易なタグの使用を許可し、より利便性の高い内容になっています。つまり、ハッシュタグやSNSの機能(インスタのスポンサード表示機能など)を使ってもOKということになります。
具体的な便益タグの事例
※WOMJ2017年版ガイドラインより抜粋し、弊社編集
ただし、ガイドラインでは、関係性の明示の条件として「WOMマーケティングを目的とした重要な金銭・物品・サービスなどの提供が行われる場合」とされています。そのため、例えば、イベントに無料で招待されたが、SNS投稿や商品PRを義務付けられていたわけではない中で自発的に投稿した場合や、受けた便益が重要でない場合については対象とならない可能性があります。
インフルエンサーとして気を付けるべきこと
ガイドラインを積極的に守ろう
WOMJガイドラインは「WOMマーケティング協議会の会員が関与する、日本国内かつオンラインのWOMマーケティング」に適用されます。会員は基本、法人なので、違反したとしても個別のインフルエンサーに罰則や処分が適用されることはありません。
ただ、それはガイドラインを守らなくていいという意味ではありません。本来は企業がインフルエンサーにガイドラインを遵守するように啓蒙すべきではありますが、WOMマーケティングの依頼者である企業がガイドラインに沿わないことを求めてきたら、ガイドラインの内容を基に拒否するくらいの気持ちでいましょう。
基準は「フォロワーを騙すことにならないか」
WOMJガイドラインでは、大枠の方向性や守るべき根本的な理念は示されているものの、個々の企業(広告主)に判断が委ねられている部分も多くあります。関係性の明示の仕方などもその一つで、これはインフルエンサーが各自でどのようにPR表記するかを決められるということにも繋がります。
ガイドラインを守るのはもちろんですが、ルール上はOKだとしても、少しでもフォロワーに誤解を与える可能性があると感じるなら、きちんと関係性を明示しておくなど、自分なりの基準を持っておくことも大切です。
つまり、クライアントに「#PRを付けるだけでいいよ」と言われても、それでは自分のフォロワーに正しく情報を伝えられないと感じるなら、#PRをつけた上で、「広告費をいただいてご紹介しています」と添えたりしてもいいのです。「自分のフォロワーがどう感じるか」を常に考えて判断しましょう。
まとめ
インフルエンサーとして、好きなものを紹介しながらお金を稼げるチャンスが増えたことはとても夢のある話ですが、一方で「有名になりたい」「お金を稼ぎたい」という気持ちを悪用される場合もあります。それにより、社会的信頼を失うのはインフルエンサー自身です。
そういったトラブルを回避するためにも、このようなガイドラインが策定されていることはとても重要であり、ガイドラインを守ることが自分自身を守ることにも繋がっていきます。フォロワーも目が肥えてきていますので、嘘のない健全なPR活動を心がけましょう。
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