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クチコミマーケティングに「守れるルール」を。WOMJガイドライン改定の意図とは?

クチコミマーケティングに「守れるルール」を。WOMJガイドライン改定の意図とは?

SNSと密接な関係にある、消費者の「クチコミ」。

そんなクチコミを用いたマーケティングの健全な育成と啓発のために、2009年7月に設立されたのが、WOM(Word of Mouth・クチコミの意)マーケティング協議会です。同協議会は、WOMマーケティングに関するガイドライン作成や事例共有を行なっており、2017年12月には、5年ぶりにガイドラインを改定しました。

今回は、その改定の意図や背景、WOMマーケティング協議会の活動について、理事長の井上一郎氏(江戸川大学 准教授)にお話を伺いました。

Interview / インフルエンサーラボ編集長 大久保亮佑 (@03rysk)

プロフィール

井上  一郎氏(いのうえ・いちろう)WOMマーケティング協議会 理事長

1989年旭通信社(現アサツー ディ・ケイ)、2002年宣伝会議(月刊販促会議編集長)、2004年アサツー ディ・ケイ第1クロスコミュニケーション局長、ADKソーシャルデザイン・ラボ所長など)を経て2017年4月より江戸川大学メディアコミュニケーション学部マス・コミュニケーション学科准教授(マーケティング論、メディア産業論)。日本広告学会常任理事、クリエーティブ委員会委員長他。共著に『R3コミュニケーション』(宣伝会議)、『わかりやすいマーケティング・コミュニケーションと広告』(八千代出版)『炎上に負けないクチコミ活用マーケティング(彩流社)等がある。

WOMマーケティング協議会とは?

大久保:WOMマーケティング協議会とは、どのような団体なのでしょうか?

井上氏(以下・敬称略):WOMマーケティング協議会(以下、WOMJ)は、2009年7月に設立された、クチコミマーケティングに関する業界団体です。メンバーは広告会社やPR会社、インフルエンサーマーケティング事業を手掛けているサービスサプライヤー、学識経験者などで構成されています。

取り組みとしては大きく2つ。ひとつはクチコミマーケティング業界が良い方向に発展するための事例共有。もうひとつは、クチコミマーケティングの問題点を減らしていくための活動です。

「クチコミフェスタ」というイベントを年1回開催しており、WOMJ会員と会員以外の方にも、クチコミマーケティングのさまざまな事例を共有しています。

※ 2017年のクチコミフェスタの様子

大久保:どのような経緯で、設立されたのですか?

井上:きっかけは2008年頃、コミュニケーション業界のとある懇親会で集まった有志が、当時のインターネットマーケティングに対し、危機感を持ったところからでした。

インターネットマーケティングには可能性がある。しかし、ステルスマーケティング問題が横行してしまったら、業界が停滞してしまうでしょう。当時アメリカには既にWOMMA(米国クチコミマーケティング協会)という団体があったのですが、日本にはそのような団体がまだなかった。

そこで日本にも作っていくべきだと考える人を募集し、発起賛同人317名と、3つの会社が参画。2008年に設立準備委員会を立ち上げ、現在は、任意の業界団体として機能しています。

委員会はクチコミマーケティングのガイドライン「WOMJガイドライン」を作成する委員会や、「クチコミフェスタ」を運営する委員会、国際委員会、サミット実行委員会、メソッド委員会の計5つに分かれています。

WOMMAとの関係性、WOMJの独自性

大久保:WOMMA(米国クチコミマーケティング協会)を日本にも、との想いではじまったとのことですが、WOMMAとは連携している部分はあるのでしょうか?

井上:WOMJは、発足直後からWOMMAの提携プログラム「Friend of WOMMA」を締結して提携関係にあります。

WOMMAが主催しているWOMMAサミットという大きなイベントには毎年WOMJの国際委員会の委員長とWOMMAの担当理事が訪問し、情報交換なども行っています。

WOMMAは、先行事例として参考にしている部分が多いですが、日本の実情に合わせてWOMJ独自の流れも多くあります。一番大きな違いは、ガイドラインの対象領域の違いでしょうか。WOMMAのガイドラインがリアルなクチコミとネット上のクチコミを全て対象にしているのに対して、WOMJではガイドラインに限っては「オンラインのクチコミ」に限定しています。

また、WOMMAは広告会社、PR会社やメディアだけでなくIBMや、ザ コカ・コーラ カンパニーなどいわゆる広告主が多く加盟しており、非常に先進的な取り組みを行っています。なお、2018年1月に、WOMMAは、Association of National Advertisers(略称ANA。米国の広告主を中核とする業界団体。)の傘下に入ったと発表されました。

WOMJガイドラインのこれまで

大久保:これまでのWOMJガイドラインの変遷について、教えていただけますか?

井上:WOMJ初めてのガイドラインは、2010年3月に発表されました。今回で3回目の改定です。ガイドラインの改定を行うたびに、そのときどきの社会の流れを背景とした課題に沿って、内容を盛り込んでいます。WOMJのガイドライン作成にあたっては、WOMMAのガイドラインから、日本にも当てはまりそうな項目を随時参考にしてきました。

たとえば、2010年の改定時に意識したのは「ブログ」。ブログを書く人と、物品やサービスの提供者との「関係性明示の原則」を盛り込みました。当時「金銭、物品、サービスの提供を受けながらブログの記事を書く」ことについて、取り締まった方が良いのではないかと声があがっていたことも背景にあります。ルール化にあたっては、ブログを読む人が不利益を被らないことを第一に考えました。

2012年の改定時には、「消費者が正しく知る権利の保護」と「消費者行動偽装の禁止の原則」という内容を追加しています。これは非常に道徳的、倫理的なルールです。消費者行動偽装のわかりやすい例を挙げると、飲食店の店長が、店長ではない人物として「おいしかった」と店の口コミを書くといった行為のことです。消費者ではない人が消費者になりすまして行動することを禁止する原則です。

今回の改定は、より情報発信者を守る内容に

大久保:時代の潮流に合わせ変化を重ねてきたのですね。昨年12月の改定では、どのような内容を追加されたのでしょうか?

井上:今回の改定では、目的に「情報発信者が正しく情報を発信しないことにより社会的信頼を失うことを防止する」という部分を追加しました。

これは情報発信者が、商品提供や金銭提供を受けて発信しているにも関わらず、クチコミを依頼されたことを隠して発信してしまうと、「あの有名人は関係性の明示をしないままブログを書いている」と糾弾されたり、一般の人でも友達からの信頼を失う可能性があったりすることを明文化した内容です。ここ数年のインフルエンサーマーケティングの流行を意識した改定となっています。

今回の改定では、企業や団体だけでなく個人も対象になることから、守れるルールを作ることを意識しました。

InstagramやTwitterなどのSNSでは、発信できる文字数が限られます。なので、「この記事は、A社から8万円もらって投稿しています」などと書くのも現実的ではない。そこで「便益タグ」というハッシュタグを入れることで関係性の明示をする、というルールを追加しています。「#スポンサー」「#PR」というものですね。

※WOMJ2017年版ガイドラインより抜粋し、弊社編集

参考記事:インフルエンサーは信頼担保のために絶対守るべき!WOMJステマ防止ガイドラインを徹底解説

WOMJガイドラインは、広告会社やソーシャルメディア事業会社といった業界内には浸透しつつありますが、情報発信者にはまだ浸透していないのが課題です。先日、大学の授業で受講している学生に「ステルスマーケティングってどう思う?」と聞いてみました。そこでの回答を聞くと、中にはステルスマーケティングを「うまいやり方だ」と思っている人もいる。

そのような背景もあり、今回のガイドラインには、本文と解説に加えてFAQを用意し「ステルスマーケティングとは?」などの項目を設け、より一般の方にも分かりやすくしています。

※詳細のガイドラインとFAQのダウンロードはこちらから

インフルエンサーは自分自身のために、ルールを知って欲しい

大久保:クチコミマーケティングは、個人のインフルエンサーの方にも大きく関わってきます。気をつけるべき点は、どのようなことにありますか?

井上:個人で情報発信を行っているインフルエンサーの方に向けては、「ガイドラインを守ることは、あなたを守ることです」ということをお伝えしたいです。

ソーシャルメディア上でのクチコミ広告は、書く人が自分の言葉で、自分のフォロワーに対して伝わりやすい表現方法で伝えるからこそ価値があるものです。変な忖度をせずに、堂々と「これは自分の意見である」「金銭やサービスをもらって書いている」ということを明らかにすることが、あなた自身の信頼にも繋がりますし、フォロワーに対する誠意にもなる。つまりあなたを守ることになるのです。

大久保:企業だけではなく、個人の発信者側にも理解が必要だと強く感じました。WOMJとして、発信者側への取り締まりや啓蒙活動は行っているのでしょうか?

井上:おっしゃる通り、個人への啓発活動は非常に大事です。アメリカではFTC(Federal Trade Commission, 連邦取引委員会)という国の機関が、「広告には真実を(Truth-in-Advertising)」という原則に基づく法律や基準を設けていて、それに反する行動をとった個人の発信者に対して罰則規定を設けています。国として、ネット上をパトロールして警告文章を送ることまでやっているようです。

日本でも2017年2月に日本弁護士連合会が「ステルスマーケティングの規制に関する意見書」を取りまとめ、消費者庁長官に提出しています。しかし、我々としては、まだ黎明期にある日本において、法規制はクチコミマーケティング市場の縮小につながるのではないかと危惧しています。従って、まずは自主規制をしっかりやろうということです。

現段階では仕事を依頼する側の会社がきちんとルールを理解し、依頼先の個人(インフルエンサー)や企業にも啓蒙をしていくことが大切だと考えています。

WOMJに関わる人がそのルールを守ること、そして自らルールについて啓蒙していくことを、今後も意識していきます。

ライター
大久保亮佑

インフルエンサーラボ創刊編集長。企業向けのSNSマーケティング情報発信メディア、ソーシャルメディアラボ( https://gaiax-socialmedialab.jp/ )の編集長も務める。