
マイクロインフルエンサーという言葉も登場している通り、今やインフルエンサーとはフォロワー数の多さという観点だけでは語ることができません。より身近なこと、直接コミュニケーションができること、ユーザー自身の好みとの合致度合いなど、最新の”インフルエンサー像”には変化が見られます。
今回はそんなインフルエンサーとファンとのコミュニティアプリ「fanicon (ファニコン)」を運営するTHECOO株式会社 代表取締役CEO 平良真人氏にお話を伺いました。fanicon上で生まれているインフルエンサーとファンとのやり取りから、今求められているインフルエンサーの姿を探って行きます
Interview / インフルエンサーラボ編集長 日比朝子 (@Solshka)
プロフィール
平良真人氏:THECOO 代表取締役CEO
1973年12月22日生まれ。神奈川県出身。一橋大学社会学部卒 伊藤忠商事、ドコモAOL、SONYにて営業、 マーケティング、ビジネス開発に携わる。2007年 Google Japan株式会社入社。2014年 ルビーマーケティング株式会社設立、2016年 THECOO株式会社へ社名変更し現在に至る。
YouTuberとの交流ニーズから生まれたファンコミュニティアプリ「fanicon」
日比:会員制のファンコミュニティアプリ「fanicon」は、どのようなきっかけで生まれたのでしょうか。
平良氏 (以下、敬称略):きっかけは弊社で開催したYouTuberのファンイベントでの出来事にあります。
弊社は元々、企業とYouTuberのマッチングの場として「iCON CAST(アイコンキャスト)」というサービスを運営していました。インフルエンサーマーケティングに携わり、インフルエンサーをサポートすること、インフルエンサーを活用したいクライアントをサポートすること、両方行なっていました。
その活動の一環でYouTuberとファンが交流するオフ会を開催したんです。ビンゴ大会やパネルディスカッション、YouTuberへの質問コーナーなども用意しました。
企画も楽しそうだったのですが、イベント終了後にYouTuberたちの前に参加者の列ができていたんですね。ファンの皆さんは、動画を見てどうだったかなど、個人的に感想を伝えたりしていました。企画したどのコーナーよりも、この時が一番盛り上がっているように見えました。
この経験から、ファンには「憧れの人に自分の話を聞いてもらいたい、知ってもらいたい」「YouTuberと個人的にコミュニケーションをとりたい」というニーズがあるのではないか。であればオンラインにも特別な場を用意して、コミュニケーションができればいいのではないかと考えfaniconをリリースしました。
双方向コミュニケーションと月額課金で、濃いコミュニティを作る
日比:faniconは、具体的にどのような特徴がありますか。
平良:faniconは現在200名を超えるインフルエンサーが登録しています。双方向コミュニケーションの重視と、月額課金制の2つの特徴があります。私たちはインフルエンサーを「アイコン」と呼んでいるのですが、アイコンの人たちは1対nでファンとつながります。ファンはアイコンと1対1でメッセージを交わすことができたり、グループチャットでアイコンや他のファンを含めファン同士で会話することもできる。
また、広告モデルにはしたくなかったため、月額課金制にもこだわっています。そうすることで、faniconのユーザーは、お金を払ってでもコミュニティに入りたいというコアなファンということになるんです。
日比:「fanicon」は、オンラインサロンのようなイメージなのでしょうか。
平良:いえ、「fanicon」はオンラインサロンのように、ユーザーへの限定コンテンツの提供を中心としない点に大きな違いがあります。あくまでもファンとアイコン、ファン同士がコミュニケーションする場としての機能がメインです。
中にはコミュニケーションとコンテンツ提供の両方を行なっている人もいます。でも、たとえばインスタグラマーだったら「2つ写真を撮ったんだけど、どっちをインスタにあげた方がいい?」とファンに聞く人もいます。普通そんなことしないじゃないですか。fanicon内では、あくまでコミュニケーションがメインなので、コンテンツは“話のネタ”でしかないんです。
日比:サポートチームのような雰囲気ですね。
平良:そうですね。本当に自分のことを好きな人が集まっているため、アイコン側が安心できる場になっている。だから他のソーシャル上では言えないこと、聞けないことも話せるんです。
熱量の維持とコミュニケーションの効率化
日比:今までファンとアイコンの間で交わされたコミュニケーションで、印象的なものはありますか。
平良:たとえば『宇宙戦隊キュウレンジャー』に出演していた南圭介さんのコミュニティでは、南さんがキャラになりきってセリフを言うなどのコミュニケーションをしていました。
ファンの中に小さなお子さんがいらっしゃる方がいて、ある時「子どもが熱を出したので、役柄になって『頑張れ』と一言くれませんか?」とリクエストしていたんです。南さんは役になりきってすぐに音声で返信をしていました。返信の速さとファンの方の喜びの大きさが、印象的なやりとりでした。
コミュニティの規模は多い人では1,000人を超えるくらい。少ない場合ですと100人や50人の人もいます。でも、とても熱量の高いファン100人が集まっているため、ログイン頻度はかなり高く、LINEやTwitterと変わらないくらいです。
日比:それはすごいですね。
平良:アプリの機能で、アイコン本人がオンラインになると通知が行くようにもなっています。その瞬間に一斉にアクセスがくる。プラットフォームとしては、コミュニティの熱量をどうあげていくか考えながら開発を進めています。
日比:それだけ熱量が高いと、個別メッセージへの返信などアイコン側の負担が大きくなってしまうのではないでしょうか。
平良:おっしゃる通り、大変な部分はあります。そこは私たちが技術で解決すべきところでしょう。とくに1対1のコミュニケーション機能において、ファンの熱量を下げずにどれだけ効率よく返信できるかが重要だと考えています。
アイコン専用のアプリも発行していて、そこには、優先順位をつけて「この順番でメッセージを返してくださいね」というアルゴリズムをつけています。たとえばコミュニティに入ったばかりの人や、誕生日の人には優先的に返しましょう、というような形です。
日比:faniconはコミュニケーション機能に特化している分、細かな作り込みが重要なのですね。faniconでのコアなファン作りに向いているのはどんな方なのでしょうか。
平良:やはりコミュニケーションが上手な方ですね。普段他のコミュニティでは出さない姿をここだけで公開する、というやり方ができる方も向いています。faniconは“ファン”がいれば誰でも使えると思っています。たとえば今はあまり登録されていませんが、有名レシピサイトでレシピを書いている方とか、スナックのママさんとか、スポーツ選手でも。継続的にファンとコミュニケーションを図っていきたいという人であれば、誰でもできるプラットフォームにしていきたいと考えています。
インフルエンサーは細分化されていく
日比:最後に、今後インフルエンサーを取り巻く環境がどのように変わっていくとお考えかをお伺いできればと思います。
平良:インフルエンサーマーケティングが進んでいるアメリカや中国の動向を見ても、今後どんな流れになるのか推測できるのではないでしょうか。
中国ではインフルエンサーをKOL(Key Opinion Leader)と表現することが多いですが、インフルエンサーのジャンルがどんどん細分化しています。さまざまなプラットフォームがある中で、表現する人のジャンルは増えていくでしょう。
例えば「黒糖まんじゅう」を作っている人のファンコミュニティって聞いたことないと思うんですが、それくらいニッチなものでも、好きでやっている人がいて、表現する場があって、ファンがつけばいい。
黒糖まんじゅうってコンビニでも普通に販売していますし、日本には少なくともいるはずなんですよね。はじめは黒糖まんじゅうというキーワードで認知されたけれど、本人のタレント性によって、マスな場に上がってくる人もいるでしょう。
加えて、今後はさらにインフルエンサーの入れ替わりが早く起きるだろうなと思っています。
テレビのバラエティ番組では、「また新しい芸人さんでてきたな」ということがあると思うのですが、インフルエンサーの世界ではそれよりもっと早いサイクルで入れ替わりが起きる可能性がある。
faniconというサービスをはじめて、ファンは想像以上にインフルエンサーのことを見ているなと感じています。その中で、インフルエンサーは、ファンとのコミュニケーションを大切にしながら、中長期的な時代の動きを見ていく必要があります。faniconはそれを支えるアプリでありたいですね。

インフルエンサーラボ副編集長 兼 コミュニティマネージャー / 個人が自分の強みを発揮して、輝ける社会にする!もっと個性豊かな人たちが発信力を持つことで、社会は面白くなると思う。インフルエンサーラボでは、インタビューを通して、インフルエンサーの魅力を伝えていきます。
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