中国で爆発的に人気を呼び、アジア各国、そして日本へもその勢いが波及している「ライブ配信」のムーブメント。LINEをはじめとした大手が参入する一方で、PinQulのようなフットワークの軽いスタートアップも参入するなど、市場は激戦になっています。
その中で、一足早くアイドルを中心にライブ配信をはじめた、ライブ配信プラットフォームが「SHOWROOM」です。「誰もがスターになれるライブ空間」というキャッチコピーのもと、ギフティングをキーにサービスを展開する同社に、その特徴とライブ配信激戦時代に見据えるものを伺いました。
プロフィール
佐々木康伸氏:SHOWROOM株式会社 CTO
2人で立ち上げた、ライブ配信×ギフティングプラットフォーム
大久保:サービスの立ち上げから関わられているということで、立ち上げ当時のストーリーを教えてください。
佐々木:ご存じの通り、SHOWROOMはDeNAの新規事業から始まりました。当時代表の前田と私はたまたま新規事業部におり、前田がライブ配信×ギフティングで新しいサービスをやりたいと考え、二人でプロジェクト化しはじめました。
とはいえ、ライブ配信×ギフティングといっても振り幅は広いですから、一からコンセプトを練り、徐々にデザイナーなどを入れ、規模を大きくしていきました。
大久保:最初からギフティングが肝のサービスだったのですね。
佐々木:ただ、実は当初からギフティング機能はうまくいっていたわけではありませんでした。かなり高速でPDCAを回し、機能追加やUIの改善を繰り返し、徐々にギフティングをしてくれるユーザーが増え、それに応じてサービスも伸び始めたといった流れでした。
ギフティングが機能し始めてある程度成長曲線が見えてきたタイミングで、さまざまなステークホルダーを巻き込みアライアンスを組んだりと、単独での成長よりもさらに高速で成長できる道を模索しました。
大久保:成長曲線が見えてくるまでにはどれくらいの期間かかったのでしょうか?
佐々木:半年ぐらいですね。中でもイベントの盛り上がりが大きく、一定のポイントを集めるとTVや雑誌に出られるというのはSHOWROOMの売りのひとつです。イベント機能自体はもしかするとライブ配信サービスでは珍しいかも知れません。ただ、ソーシャルゲームでは一般的な機能で、盛り上がるしユーザーの参加率も高いです。
その要素をライブ配信に持ってきたことが大きな原動力になりました。アイドル界隈でもイベントはありますよね。双方のいいところをうまく引っ張り出して、実装しているのがSHOWROOMのイベント機能だと思います。
配信者と応援者の濃い関係性が生まれやすいプラットフォーム
大久保:サービス開始から半年で成長曲線に乗ったとのお話でしたが、ライブ配信プラットフォームの場合、配信する演者が重要な要素になると思います。当初はどのように集められたのでしょうか?
佐々木:今でこそ業界認知があるサービスですが、当初はもちろん無に等しい。全国のアイドル事務所などにひたすら電話して、「ぜひお願いします」と時間をかけて営業しました。
それがある程度安定し、認知も得られてきた段階で、演者をアイドルから一般の方にも広げました。実際、現在は事務所に所属されていない方もかなりいらっしゃいます。そういった方は我々ではなく、間にオーガナイザーと呼ばれるキャスティング会社やインフルエンサーを抱える会社などが入り紹介いただいています。
大久保:元々インフルエンサーとして活動されていた方ももいらっしゃると。
佐々木:そういった方もいらっしゃいますが、元々インフルエンサーとして活躍してた人というよりSHOWROOMきっかけで、ファンを抱える事が出来るようになった方が多いです。他のプラットフォームでインフルエンサーを育てるよりも、立ち上がりが早いのがSHOWROOMの特徴、1週間、1ヶ月あれば非常に濃いファンをつけることもできます。
これはやはりライブ配信ならではの強みで、リアルタイムに視聴者とコール&レスポンスができるので、直接会っているような感覚に近く、接している時間あたりのコミュニケーションの密度がtwitterやInstagramより濃いので、視聴者との関係値が高まりやすいんです。そのため、より応援してあげたいという気持ちも高まりますし、応援している子がイベントで勝つとその喜びも共有できる。仲間というか苦楽をともにするファミリーとも言える団結感が生まれるんです。これは他のメディアでは絶対に生まれない関係性ですね。
努力を続けられる人が報われるプラットフォーム
大久保:SHOWROOMの演者で人気出る方はどういった特徴があるのでしょうか。これからはじめたいと考えている人に参考になるようなお話があればぜひ教えてください!
佐々木:SHOWROOMは、ある程度誰でも結果につながるというのが特徴のひとつです。逆に言えば、個々人の努力次第。継続的に毎日配信したり、話のネタも都度しっかりと考えたり。どういったコミュニケーションを取ると喜んでくれるだろうかと視聴者のことを考え、コンテンツを作ることに時間を割いている人ほど成功している印象があります。
努力を続けられる子が報われるプラットフォームなので、イベントとかをちゃんとこなしつつ、1ヶ月くらい続けられれば自然と固定ファンが付く傾向にあります。逆に努力が続けられない子はどんなにビジュアルが良くても、人気が出るのは難しいです。ファンは頑張っている姿に惹かれるので、いかに頑張っている姿を見せられるかが鍵になります。
大久保:なるほど。イベントだと競い合う形になるので、その分盛り上がるといった具合なのでしょうか?
佐々木:そうですね。ただイベント自体は膨大な数あってジャンルも幅広いですし、競い合う形だけという訳ではないので、初心者の人でも楽しめるように設計されています。テレビや雑誌に掲載されるといったものから、10万円分好きなものが買ってもらえるもの、お肉をもらえるもの、オリジナルのアバターが作れるものなど。さまざま用意しています。
ですから積極的に参加することで、小さなハードルからはじめて、そのうち大きなハードルへも挑めるようになるといった成長をしていけます。その過程でファンが付いて、一緒に成長を喜んでくれるといったような関係性を作っていって欲しいなと思っています。
将来の夢はSHOWROOMerという世界を
佐々木:基本的にSHOWROOMは夢を叶えるためのプラットフォームだと思っています。演者の方も、SHOWROOMの活動の先にもっと大きな夢があって、それを叶えるために登録しています。そのために我々もテレビや雑誌の掲載といった夢を叶えるためのコンテンツ、出口のひとつになる可能性のあるものを提供しています。
一方で人気のある子はSHOWROOMだけで生活するというのも可能だとおもいます。そういったロールモデルづくりをしていきたいですね。
大久保:SHOWROOMとしては夢を叶えたい子のために機会を提供する場で、出口となる場所も設けていると。すると有名になると卒業して出ていくというイメージなのでしょうか?
佐々木:中長期的には、演者の方がSHOWROOMを続けたいと思ってもらえるようなプラットフォームにしていきたいと思っています。それはブランディングかもしれないし、プラットフォーム力かもしれません。現状はテレビや雑誌にすぐに追いつくのは難しいでしょう。ただ、SHOWROOMは努力をする人が報われる、ちゃんと成果につながるという特徴を持っています。ここは今後に必ず活きてくると思っています。最近小学生の夢がYouTuberと話題になっていましたが、いつかはSHOWROOMerが夢と言われる世界を作りたいですね。
大久保:最後に、今後の方向性を教えてください。
佐々木:近い将来から行くと、まずはジャンルを広げることですね。最近、クラシックや声優の方が演者として入ってきていますが、まだまだジャンルが少ない。これまで築いてきた「応援文化」を活用して、ジャンルを広げていこうとしています。特に、男性演者が少ないので、今始めるのは良いかもしれません。
また、すでにSHOWROOM VRを2016年にローンチさせていますが、今はAR展開に向けて取り組みを始めています。プラットフォーマーとして、新技術を取り入れてエンタメをアップデートしたいです。一緒に取り組んでくれるエンジニアも絶賛募集中です!興味のある方はこちら(https://www.wantedly.com/companies/showroom-live/projects)をご覧ください!
さらに、アジア展開も視野に入れています。ライブ配信は台湾・中国が強いですが、「応援文化」はその中でも差別化ポイントです。インドネシアなど東南アジアをまずは抑えていきたいですね。
インフルエンサーラボ創刊編集長。企業向けのSNSマーケティング情報発信メディア、ソーシャルメディアラボ( https://gaiax-socialmedialab.jp/ )の編集長も務める。
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