influencer lab
【新着記事】 【編集追記】Twitter流入70%越え。”Twitter”の話題は盛り上がるを実証。_”バズるアカウントには法則がある” TwitterおじさんとWeb系ツイッタラーが語る、Twitter論
influencer lab
post valuation
GENIC LAB木村氏が語る|インフルエンサーPRの問題と理想のインスタグラマーの姿
インタビュー

GENIC LAB木村氏が語る|インフルエンサーPRの問題と理想のインスタグラマーの姿

Instagramで人気を集めるインスタグラマー。彼ら彼女らに商品を紹介してもらう「インフルエンサーマーケティング」が盛んになっています。

企業は若年層向けのマーケティングの活路として広告を投下し、インスタグラマーとして活躍する人たちは、企業の商品撮影をして投稿することで、利益を得られるようになっています。

一方で、新しい市場ということもあって、ルールや規制が少ないため、広告表記の有無や広告効果の信頼性など、広告モラルが問われているのも事実。現状のインフルエンサーマーケティングにおける問題とは。そして、今後企業とインフルエンサーたちはどのように問題に向き合っていくべきなのか。

今回は、インフルエンサーが撮影する画像・動画を納品する「物撮りサービス」やインフルエンサーを活用したマーケティング支援など、SNSを軸にした複数のサービスを運営する株式会社GENIC LAB 代表取締役CEOの木村優紀子氏にお話をお伺いしました。

Interview / インフルエンサーラボ編集長 大久保亮佑 ( @03rysk )

プロフィール

木村優紀子 氏:株式会社GENIC LAB 代表取締役CEO

東北大学理学部宇宙地球物理学科で天文学を学んだあと、全く分野の異なるWEB広告代理店の株式会社オプトに2013年新卒で入社。
2016年8月、スナップマート株式会社の立ち上げに執行役員COOとして参画し、2017年8月より現職。
インスタグラマーによる写真・動画の撮影サービスを中心に、SNS関連サービスを複数展開し、大手広告代理店や大手メーカーなど数十社とお取り組み。

自身も積極的にインスタグラムを運用中。(@yukiko.423

インスタグラマーに「物撮り・PR」を提供できるサービス

大久保:企業がインフルエンサーマーケティングを必要としている背景、理想のインフルエンサー像についてお伺いしたいのですが、まずは御社の事業について教えてください。

木村氏(以下、敬称略):GENIC LABは、「10~30代女性にリアルにウケるInstagenic(インスタジェニック)なコンテンツを提供」する会社です。

具体的な事業内容としては「インスタグラマーが撮る画像・動画納品サービス」「LIVE配信コンテンツ生成」「インフルエンサーPR」「SNSコンサル&ビジュアルコンサル」の4つを展開しています。現在企業からの依頼が多いのは、インフルエンサーマーケティングとインスタグラマーの物撮りサービスです。

中でも、インスタグラマーの世界観をうまく活用したいけど、どうしたらいいかわからないという企業担当の方に要望をいただき、間に入って指揮をとらせていただくことが多いですね。

企業がインスタグラマーにPR・物撮りを依頼する理由

大久保:テレビCMといったマス広告はもちろん、ネット広告の出稿費用も増加してきた中で、企業がインフルエンサーマーケティングを必要としていることには、どのような背景があるのでしょうか?

木村:多くの依頼を受けているのですが、中でも女子向けの製品を扱っている男性担当者からのお問い合わせが一番多いと感じています。

担当者とは年齢や属性が大きく離れた女子が、自社製品のターゲット。そういうこともあって、企業の担当者はターゲットに近い学生、OL、主婦のインフルエンサーに、自社製品の刺さりどころを探ってもらい、情報を届けてもらうところを期待していることが多いです。

ユーザー視点でのクリエイティブ素材の制作はもちろん、ターゲットにリーチするための広告クリエイティブとしての活用も、ニーズがある部分です。

PR案件とは大きく違う、物撮りのニーズ

 

大久保:インスタグラマーが画像や動画を納品する「物撮りサービス」でも、フォロワーの数は重視されますか?

木村:物撮りのときは、フォロワーはそれほど重視されないですね。どちらかというと、きちんと動いて成果物を納品してくれるか。期待している世界観を作ることが出来ているか。フォロワーの数は少なくても、世界観が自社の製品にマッチしていて、仕事をしっかりやってくれることが評価されています。

また企業の要望を汲み取ったうえで、企業がそれまで見つけられなかった構図や素材を見つけられる人が何度も繰り返し依頼されます。

大久保:PR案件とは企業が求めるニーズはだいぶ違う印象ですね。PR案件では、どのような方が評価を受けやすい、案件を受けやすいのでしょうか。

木村:だいぶ違いますね。PR案件、インフルエンサーマーケティングの視点でいうと、まだまだフォロワー数の部分しか見られません。何万フォロワーの人にいくらで頼めるかという視点です。その後継続して依頼されるかどうかは、フォロワー数ももちろんですが、エンゲージメントや実際に商品を使ってユーザー目線で投稿してくれるか、などの視点も入ってきます。

あとは、カテゴリが明確な人も依頼されやすいです。「旅行」なのか「食事」なのか「コスメ」なのか、明確なジャンルやカテゴリと呼べるものがあると、企業は依頼しやすいと思います。読モやモデルなど、その人自身にファンがついている場合も、フォロワー層が想像できるので依頼されやすいです。

企業、インフルエンサー、双方に求められる広告モラル

大久保:インフルエンサーマーケティングで広くサービス提供されていますが、この市場の課題はなんだと感じていますか?

木村:色々な視点で課題はあると思いますが、「広告モラル」と「本質的なインフルエンサーマーケティングの理解」という二軸で語れると思います。

1点目の広告モラルについては広告業界で散々議論されてきたテーマではあります。投稿のときにステルスマーケティングと見られないためにはPRタグをつけるだけでいいのか、どのように明示するのが効果的か、PR投稿はどのように行われるべきか、など多くのテーマが議論されているところです。

大久保:2点目の本質的なインフルエンサーマーケティングの理解という点は?

木村:企業側の問題点としては、インフルエンサーにPRをお願いするときに、フォロワー数や数字的な反響しか見ていないことですね。インフルエンサーマーケティングの本質は、インフルエンサー自身が好きな商品を、自分の言葉で発信することです。今は「とにかくインフルエンサーに投稿して欲しい!」という安易なケースが多いので明らかに広告的。拡散力があるから依頼するという側面が強く見られ過ぎています。

企業が何回も依頼するなら、フォロワー10万人のインフルエンサーではなくて、自社の製品を愛して使ってくれているカスタマーの中から、フォロワー5000人のインフルエンサーに依頼した方が効果はあるかと。製品のファンである人から、新しい角度で何回も発信してもらった方が、結果は出ると思っています。

大久保:影響力の大きさ以上に、濃度を考えて依頼するインフルエンサーを決めていくということですね。

木村:広告の代わりというよりは、新しいアプローチとして、もっと数字面以外の定性的な側面を気にしたほうがいいと思います。投稿の質やコメントの信憑性をもっと重視すべきなのに、エンゲージメント・いいね数や、意図していない投稿にされていないか、という側面しか見られていないのをもったいないなと感じています。

大久保:その他、木村さんがこれまでインフルエンサーの方と話した中で見えてきた問題はありますか?

木村:ステマ問題に、企業が加担してしまっているケースもあります。企業としてステマまではいかなくても、PR案件を匂わせないように投稿を依頼することがあるのです。ブランド名のハッシュタグと遠い位置にPRのハッシュタグをつけさせるとか。あるいは、使っていない製品や無償提供した製品を、購入して使ったことにしてPRしてもらうなど。企業の依頼モラルも問われていると思います。本質的には企業側がステマ問題に危機感を感じてくれるのが一番ですが、現時点ではその投稿を見るユーザー、依頼を受けるインフルエンサー側で、情報の受け取り方や正しい投稿方法について考える必要があると思います。

インフルエンサーの今後の課題は信頼性の育成

大久保:企業の依頼方法や評価方法についてお伺いしましたが、インフルエンサー側の問題としては、どのような点が挙げられるでしょうか。

木村:やはり、ステマや投稿のモラルは問題だと思いますが、問題の本質にあるのは「アカウントの信頼性」について、どう向き合っているか。企業からの依頼に対してそのまま答えて、簡単に「やります」程度に投稿をすることは簡単ですが、適当な投稿をしているとフォロワーからも信頼されにくくなって、結果としては企業からの依頼も減ってしまいます。

その視点でいうと、インフルエンサーのゆうこすさんの姿勢はとても見習うところが大きいです。彼女は、企業から依頼があったときにも、自分が信頼できない案件は断る。その上で、受けた案件に対しても、ユーザーが知りたい情報を丁寧にレビューして、PR案件だとわかっていても信頼できる投稿を行なっています。

大久保:PRとつけたら見られないからつけないのではなくて、本当に信頼している商品だからPRできているということをフォロワーにも真正面から伝えているんですね。

木村:インスタグラマーって今はバブル状態で、1投稿で何万円も稼げてしまうから、そこまで丁寧にやる人も少ないんです。でも、SNSって個人のオウンドメディアですよね。そこに自分が信頼できていないものを投稿することが、中長期的にリスクだと思います。なので、自分が信用するものを、自分の言葉で発信していく彼女は、長期的に愛されるインフルエンサーのお手本だと思っています。

これからはグーグル検索の上位結果みたいなインフルエンサーは消えていく

大久保:企業、インフルエンサーにまつわる問題点をお伺いしましたが、今後インフルエンサーとして活躍していきたいと考えている人に向けて、求められる理想のインフルエンサー像を教えてください。

木村:重要なことは、2つあります。1つは、先ほども話した「信頼性」です。自分のアカウントをフォロワーにも企業にも信頼され続ける価値のあるアカウントにすることが重要です。自分が好きに扱えるオウンドメディアだから、自分が信頼していない情報を流すことは自分の価値を落とします。そもそも、SNSで情報を検索する人は、グーグル検索で出てくるアフィリエイトの情報を信頼していない人だと思うんです。

検索上位にあるのは全部同じような情報のキュレーションサイトやアフィリエイトサイト。どれがいいのか全然わからないし、個性もない。わくわくしないんです。

大久保:たしかに検索していてもワクワクしないですが、インスタで探すのは面白さがありますよね。

木村:その中でInstagramを見ている人たちに同じ様な情報を提供してはいけないと思います。企業から依頼があったから受ける、条件がいいから受ける、ではなくて自分が好きだから、信頼できるから受ける。そういうサイクルを作った方が、提供価値は最大化していきます。

大久保:あくまでも自分の軸や自分の主観、テーマを大切に保つことで、信頼性が上がっていくということですね。2つめはどのような点でしょうか。

木村:2つめは、カテゴリを明確にすることです。フォロワー数が多くなくても、テーマやカテゴリを絞れているだけで、エンゲージメントは確実に高くなります。例えば私のInstagramは旅行アカウントですが、フォロワー5,000人程度でも旅関連の案件を受けることができました。

また、カテゴリの中でも、どのクラスタに対してアプローチをするか、という点は忘れてはいけません。例えばGENKINGさんやMEGBABYさんが数年前に流行りましたが、彼女らは「セレブ」クラスタですよね。一方で最近はゆうこすさんみたいに、”セレブ”でも”どアイドル”でもないけど、身近にいる人たちの中ではトップクラスという親しみやすさや発信している内容の信頼性の高さが、ウケています。

そのように、例えば旅行ジャンルの中でも、どういうクラスタの人たちに届く、刺さる内容にするのか。そういう設定をした上で、濃い情報を発信していくことが重要です。

大久保:自分の投稿を見ているクラスタを意識して、同じテーマで投稿を続けていくということですね。

木村:実際、小中高生の生活を想像してみるとわかりやすいと思うのですが、教室の中や学校の中の憧れの的の女の子は真似されるんです。どういう人たちに真似されるのか、愛されるのかを考える必要があると思います。

カテゴリの統一や情報の選定で、信頼性や価値を上げていくこと。それと同時に親しみやすさをどう伝えていくか。それらを考えていくことで、企業からもフォロワーからも愛され続けるインフルエンサーになれると思います。

アバター
ライター
大久保亮佑

インフルエンサーラボ創刊編集長。企業向けのSNSマーケティング情報発信メディア、ソーシャルメディアラボ( https://gaiax-socialmedialab.jp/ )の編集長も務める。

keywords

relarion

pick up

interview