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ことりっぷWebプロデューサーが語る、ブランドを固定しないための戦略とは?
インタビュー

ことりっぷWebプロデューサーが語る、ブランドを固定しないための戦略とは?

ことりっぷのウェブメディアアプリを運営する Webプロデューサーの平山さん。

一見、インフルエンサーと関係のない分野に思えますが、ブランドを構築し、その周辺にファンのコミュニティを作り、それを発展させていくプロセスは、メディアも個人も変わりのないものだと思います。

今回は、平山さんにことりっぷというブランドを作った後に、どうブランドを成長させていくのかについて伺いました。ぜひ、「ことりっぷ」を自分というブランドに置き換えて読んでみてください。

プロフィール

平山 高敏 (ひらやま たかとし)氏:2013年のことりっぷWebの開設時から Web事業全般を統括。2015年にはコミュニティアプリの立ち上げに携わり、メディアの枠を越えたコミュニティ戦略を担う。

ことりっぷWeb

https://co-trip.jp/

「ことりっぷ」の世界観を届けることに徹底した

日比:まずは、ことりっぷWebを立ち上げることになった背景を教えてください。

平山氏(以下、敬称略):ことりっぷは、2008年に創刊し、その後10年間近くでシリーズ累計1500万部以上を発行している、昭文社の旅行ガイドブックです。私が2012年に入社した時には、すでに「ことりっぷ」は広く認知を獲得していました。「ことりっぷする」などといった言葉がSNSで見かけるようになりファンが一定数つき、ブランド化したフェーズになっていました。一方で競合誌が増え、旅のWebメディアが増えてきた時期でもあり、次の一手が必要な時期でもありました。

そこで、ファンとよりコミュニケーションをとるため、ファンとデイリーでつながるWebメディアの立ち上げとSNSの強化に踏み切りました。

日比:ウェブメディア立ち上げのときに、意識されたことはどんなことでしたか?

平山:ことりっぷが持っている世界観と異なると思うものは掲載しないという主観的なルールは作っていました。ぼんやりと「ことりっぷ」ってこうだよね、という「らしさ」みたいなものは、編集メンバーで共有されていました。

外から語られる「ことりっぷ」を意識しつつも左右されずに、編集メンバーとは都度「ことりっぷ」を創刊したときの想いやゴールを共有するようにしていました。

ブランドイメージを1つのことばに

日比:そういった議論を経た結果、「ことりっぷ」らしさとは何だと表現されているのでしょうか?

平山編集メンバーと話し合った結果、出てきた言葉が「心地よさ」でした。書籍の作りを見ても余白を使った心地よさがあったり、持ち運びを考えて、軽い紙を採用したりと細部にわたって、読者の心地よさを意識していました。また、紹介している情報量もターゲットの方にマッチする情報に絞り、従来のガイドブックの1/4まで削りました。

以来、これをブランドのコアにおいて、常に意識するようにしています。編集部から発信する内容は、ユーザーの方が「心地よさ」を感じられる内容にしているのです。これは積極的に外部に発信をしているわけではないので、ユーザーの方が明確にイメージしているとは思っていません。でも、この「心地よさ」は、ユーザーの方の中には、「自分にとっての心地よさ」という形でイメージ作られていると思っています。SNS上でハッシュタグをつけて投稿されている内容からそんなことを感じています。そして、彼らが、そのイメージとともに発信をしてくれるということが、「ことりっぷ」にとって資産になっているのです。

日比:ことりっぷ「らしさ」と表現されていたものを、具体的に「心地よさ」という言葉で表現したことで、伝わってくるものが大きく異なりますね。

ちなみに、ことりっぷでもSNSを運用されていますが、どんなルールで運用されているのでしょうか。

平山内容についてほとんどルールは設けていません。一方で、トンマナに関しては、細かいルール設定をしています。例えば、音符を使わない、丁寧な語り口にするなど、細かいルールがあります。やはり、ガイドブックの時から築いてきた「ことりっぷ」らしい語り口調の世界観があるので、SNSもそこから大きく外れないように注意しています。感嘆符ひとつとっても、世界観が変わる可能性がありますので、そういった点も気にして運用しています。

ブランドの辺境を開拓する

日比:ブランドを固定化しないというお話が気になっています。このブランドを固定させないために、工夫していることはありますか?

平山トップがメディアの辺境を開拓することです。つまり、一見、ことりっぷらしくないけど、近い距離にいそうな場やテーマを見つけること。それを私の役割として意識しています。

「心地よさ」って時代によって変化するじゃないですか。一度、「心地よさ」を細かく定義しにいってしまうと、イマについていけなくなる。だから、次の「心地よさ」を探すために、今まで「ことりっぷ」の本流でアプローチしないようなものを探しにいって発信しているんです。

日比:具体的にはどんな動きをしているのでしょうか?

平山:例えば、パートナーとして提携したローカルメディアが、ことりっぷのアプリ内に記事を出せる「パートナーメディア」施策を始めました。ことりっぷとしては発信しないような情報だけど、ことりっぷアプリのユーザーからのニーズが高いようなローカルな情報を発信していて、世界観も合うメディアとコラボしています。

このパートナーとなるメディアは、私が一つ一つ会いにいって決めています。しっかりと会って話して、選ぶ。そのプロセスを大事にしています。この施策って、三方よしなんですよね。外のメディアにとっても、すでにユーザーを抱えていることりっぷアプリ内で記事をシェアできるし、ユーザーも欲しい情報が見つけられる。

また、最近は編集部から発信するコラムも始めました。これは、ことりっぷでは取り上げていないけれど、編集部が今後追いかけていきたい人やモノを取り上げています。まだ完成していないゲストハウスの作り手さんや、地域を盛り上げようと活動されている方などの話を載せることで、読者の方の興味関心を拡げられるように心がけています

コミュニティ形成のステップを意識する

日比:この一連の動きをインフルエンサーにも適用させられる気がします。

平山:そうですね。ファン = コミュニティ形成のプロセスは変わらないので、参考になるのではないでしょうか。私自身が気をつけていた点に、コミュニティ形成のステップというものがあります。

例えば、私が2013年にウェブメディアを始めた時には、「ことりっぷ」というガイドブックが5年間築いてきたブランドが存在した。そこから、ことりっぷ = 「女子旅」といったような、社会からのブランドイメージに対して、運営側が一緒になってしまうのではなくて、そもそも伝えたい想いである「心地よさ」に立ち返り、市場が求めているコンテンツと、潮流に流されないコンテンツをバランスよく発信していくことが次のフェーズだと思います。このフェーズを意識することが大事だと思っています。

平山氏の話をもとに弊社で作成

このブランドのフェーズというのは、長年愛されるアーティストの特徴で表現するとわかりやすいかもしれません。例えば、ラブソングでヒット曲を出したとしても、その後もラブソングだけを量産していてはいずれ飽きられてしまいますよね。市場が求めていることに応えることも大事ですが、そのアーティストが音楽を通じて何を伝えたいのか、そういった“主語”が見えるような音楽を発信し続けていると、しっかりとファンがついてくると思うんです。

日比:まさにインフルエンサーにも当てはまるステップだと感じます。トップインフルエンサーであるゆうこすさんは「モテクリエイター」としてセルフブランディングをした。その後、Newspicksでプロピッカーになったり、ホリエモンさんとトークイベントをしたり。モテクリエイターの枠から外れたところでも活躍することで、ゆうこすファンコミュニティを築き上げていっています。

ことりっぷで場を持ちたい

日比:今後挑戦したいことはありますか?

平山:ずっと前から考えていることではありますが、場を持ちたいですね。昼間は食堂で、夜は地域で活躍するプレイヤーや、都道府県など自治体の方を絡めたイベントを開くとか。そういった形で、人が集まる場を作り、その場を通して新たなうねりを起こしていきたいです。

日比朝子
ライター
日比朝子

インフルエンサーラボ副編集長 兼 コミュニティマネージャー / 個人が自分の強みを発揮して、輝ける社会にする!もっと個性豊かな人たちが発信力を持つことで、社会は面白くなると思う。インフルエンサーラボでは、インタビューを通して、インフルエンサーの魅力を伝えていきます。

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