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独自の着眼点で中国のトレンドを追う、 華僑マーケターが語る、いま注目の中国。
インタビュー

独自の着眼点で中国のトレンドを追う、 華僑マーケターが語る、いま注目の中国。

華僑というバックグラウンドと持ち前の情報収集と着眼点を活かし、日系企業の中国進出コンサルティング等に携わられてきたDIGDOG llc. 代表の陳暁夏代(ちんしょう なつよ)さんに、中国におけるSNSの活用状況や、現地におけるインフルエンサーマーケティングの最新事情を伺いました。

陳暁さんは、フリーで日中のイベント司会・通訳を経て、芸能事務所にてイベント事業に携わり、2013年からは広告代理店でブランディングや商品開発・販促に従事。現在は独⽴し、ご自身で月に一度は中国に足を運びながら、⽇本と中国双⽅における企業の課外解決や企画⽴案をされています。また、中国ミレニアルカルチャー情報メディアDIGDOG を立上げ、⽇中双⽅のトレンドに寄り添ったブランディングや若年層マーケティングも展開されています。

Interview / インフルエンサーラボ編集長 日比朝子 (@Solshka)

プロフィール

陳暁夏代さん DIGDOG llc. 代表 (@chinshonatsuyo)

日本と中国の背景を持ち、その語学力で2009年よりフリーで中国にて数々のイベント司会・通訳を行う。その後上海にて日本向け大型就職活動イベントの立ち上げやコンサルティング会社での 日系企業の進出支援に携わる。2011年よりエンターテイメントの世界に進出し、北京・上海・シンガポールにてファッションイベントの企画・運営を行う。2013年東京に拠点を置き、広告代 理店にて企業のブランディングや商品の開発から販促まで幅広く 手がける。現在は独立し、日本と中国双方における企業の課外解決、及び様々な企画立案を行う。

世の中の変化や顧客の気持ちの変化など、リアルタイムな情報の キャッチアップを得意とし、日中双方のカルチャーに寄り添った ブランディングや若年層マーケティングを多く手がけている。

四川の旅先 気ままにはじめ1週間で3000フォロワーへ

日比:本格的にTwitterを始められたのはいつからですか?

陳暁夏代さん(以下、敬称略):昨年2017年9月に四川への旅先で、友人に勧められたことがきっかけです。

たまたま友人と四川へ遊びに行ったときに、わたしが現地にあるものについて解説をしていたら、友人に「それ、Twitterに書いたら価値があるんじゃない」と言われました。この一言をきっかけに、一週間、旅先での見聞をツイートしてみたのです。

すると、たった一週間でフォロワーが3000人になり、はてなブックマークでも1位にランクインしました。また、現地の空港に、新しいカートが導入されたことをつぶやいたら、万単位でリツイートされて。いろんな人から連絡が来るようになりました。

気ままにはじめたツイートから、「まだ日本には出回っていない」リアルタイムの“生“な情報に価値と需要があることに気づかされました。また、中国は、これからも自分の仕事と密接に関わる国ですし、日本にとって欠かせない存在になってくると思うので、「中国に関する正しい情報が伝わるといいな」という思いから、その後もTwitterを続けているという経緯があります。

日比:いまは東京・渋谷が拠点とのことですが、中国にも足を運ばれながら発信されているのでしょうか。

陳暁:そうですね、月1回のペースで行っています。

あらゆる物事は「ウェブ上にでる」とすべて表面的になってしまいますし、どのようなツールであろうと一度で発信できる量に限りがあります。さらに情報に「タイトル付け」なんかがされたりすると、とてつもなく抽象化されてしまう。

このようにウェブ上にでる過程で「表面化・限定化・抽象化されたもの」の実態を現地に観に行ってみると、ウェブ上で表現されたものとは全く違ったりします。だから、やはり「現地でしかわからないこと」を大切にしながら、発信したいんです。自分自身がウェブにあがっているものを普段から疑う姿勢を持っているので、現場に足を運んで、自分の目で見て、手を触れるようにしています。

私が発信をする意味は、あくまでも今まで中国に対して誤解を持っていたり、新しく興味を持ち始めたりしている人を対象に、客観的な視点で情報を伝達することです。それが、自分の強みだと思っているので、常にフラットな立場を意識して発信しています。

発信のカテゴリでいうと、政治や経済、ITは既に専門家や発信をしている人が多くいるので、発信されていないエンタメやリアルな若者のトレンドを発信しています。また中国に関して、ネガティブな意見を発信している人は多いので、中国の面白い・楽しい話題も多く出しています。情報は受け取り方次第で右にも左にも取れますが、伝わることを大事にしているので、時にはあえて刺激的な単語を選んだり、時には独自の視点で考察を書いたりしています。

日比:他の方がどんな発信をされているのか、研究されているんですか?

陳暁:Twitterを始めて1年が経ちましたが、あまり人の投稿は見てないですね(笑)自分の発信したいことだけを書いてます。だから独自性が強くなるんだと思います。

あと目についた話題で違うと思ったら訂正するし、正しい情報が回っていたら私はもう言及しません。同じテーマに関心のある人は多分同じ属性の人をいっぱいフォローしてると思うので、同じこと書いてもつまんないじゃないですか。みんなが知らないことを多めに書こうかなと。

分散化と多様化進む、中国のSNS事情

日比:現在日中双方でビジネスのサポートをされていますが、中国ではどのようにSNSが使われていますか。活用状況について教えてください。

陳暁中国のSNSは多様化していますね。Facebook、Twitter、Instagramにプラットフォームが限られている日本とはまったく違う市場です。

いまの日本におけるLINEにあたるWeChatや、Twitterにあたる微博(Weibo)に加えて、ライブECだけのプラットフォームもありますし、知恵袋から派生したSNSもあります。また、最近日本でも話題になっているTik Tokのように、エンタメ要素の濃いものもあります。エンタメ要素を中核に、あとからSNS機能がついたものもあります。

また、ぞれぞれのSNS機能をみても、日本よりも構造が複雑な印象があります。例えば、日本ではYouTubeを使うとき、動画の下にコメントをつける機能しかないですよね。しかし、中国の動画サイトでは、コミュニティーページで情報をシェアして、議論ができたりします。

というのも、中国のSNSの傾向を見ると、用途別に最初は機能が明確に「ブログ」なのか「チャット」なのか区別がつくんですが、ユーザーが増えてくるにつれ、サービス内の機能が多様化するんですね。また他サービスとの相関性や課金アイテムも増えたりしてどんどん複雑になっていきます。

なので例えばチャットツールだったWeChatもEC機能もあればブログでもあり毎日の財布でもあります。

また、中国のSNSには「自動車」「化粧品」「アーティスト」など、様々なファンコミュニティーがあります。カテゴリーごとに最も使われたSNSが1、2位と市場を独占していき、トップになったものが、やがて機能を追加していき大型プラットフォーム化していくという流れがありますね。

日比:では、ひとりのユーザーからみた場合、自分の好きなものがあるカテゴリーごとに、SNSを使い分けているという状況なのでしょうか。

陳暁:そうですね。カテゴリーごとにいろんなサービスが存在しますし、ニッチなプラットフォームもありますが、そこは中国ですのでニッチでもそれなりのユーザー数はいると。

これらの分散したユーザーが集まるプラットフォームが、WeChatと微博(Weibo)という状況です。WeChatと微博(Weibo)は、その機能の中でファンコミュニティーが存在するので、地方都市・老若男女問わずインフラ的な存在と言えます。WeChatは家族や仕事、カスタマーサービスなど誰とでも連絡を取り合うものとして活用されており、微博(Weibo)は、WeChatに比べ発信力のある人の媒体のようになっており、見るだけの人もいるという位置付けですが、あらゆる情報はこの二つに集約されますね。

中国におけるインフルエンサー、KOLの実態

日比:Weiboユーザー数の違いは、インフルエンサーの中国語にあたる「KOL(“Key Opinion Leader”の頭文字をとった略称。中国でのオンラインマーケティングにおいて重要な役割を持っている、SNS上で影響力の高い発信元のこと)」の方々が稼いでいる額が桁違いであることからも、わかるような気がします。

陳暁: よくある誤解を解きたいのですが、日本でいう“インフルエンサー“はどうしてもInstgramを軸としたフォロワーの多い女性を想起しますが、それは中国では「網紅(ワンホン)」と言います。これは主に人物個人を指します。(「ネット」に「赤い」という意味の漢字の組み合わせで、「影響力のある人」という意味です。)

日本でKOLと言われているものは網紅(ワンホン)よりも定義が広く、“影響力のある発信元”を指します。それは個人アカウントの場合もあれば、媒体アカウントの場合もあります。

稼いでいるKOLの方は確かにいて、KOLに対する認知や理解、マーケティングとしての活用状況については、中国と日本では主にその収入源に違いがあります。

日本のインフルエンサー市場はまだまだPRの一環として、商品を宣伝した広告費を稼ぐことにとどまっていますが、中国のKOLの収入源の多くはECでの売上です。ほとんどの大型KOLはSNSでの発信媒体とECサイトが連結しており、宣伝したものをタイムリーに販売展開します。

わたしが仕事でKOLに関するコンサルティングなどを行う場合は、おそらく日本におけるインフルエンサーマーケティングよりも複雑で、クライアント企業が売りたいもの、それが売れるプラットフォーム、売れる人KOL(宣伝、流通)という順番で分解していき、プランニングしています。

なので、通常の商品とKOLとの相性に加えて、ライブコーマースや売上にどれだけ貢献できるかを選定のときにシビアに見ています。

瞬時に広まる「口コミ社会」を生き抜く SNSの特徴とは?

日比:これまでお話しいただいたなかでも、たくさんのSNSがあるようですが、これだけ競争が激しい中国で「勝っていくSNS」の特徴って何でしょうか。

陳暁:一つは、他のアプリとの連動性ですね。中国でいえば、アリババとテンセントの二つが大きなグループとして存在しているので、どちらかの系列のサービスと連携されていることは重要だとおもいます。あとはカテゴリを絞ることではないでしょうか。

さらに、中国という地域の特徴として「クチコミ社会」であることが挙げられます。良いものは良い、悪いものは悪い、というクチコミが本当に瞬時に広まります。ですから、サービスがリリースされた瞬間によかったらすぐに成長しますし、改善点はローンチ後すぐに修正されていきます。そして、どんどん最新版にアップデートされていく。したがって、勝ち残るサービスは、そういったクチコミについていくスピード感があることも特徴と言えるのかもしれません。

また、クチコミの捉え方も日本と違います。日本では数よりも質が重要で、有名人の評価などが大事になってくると思いますが、中国ではクチコミの総数が大事です。イメージとしては、食べログの点数に近いです。点数が高くても総数が少なければ信憑性が乏しい。総数が多くて点数が高ければ信憑性が高いです。

中国もすっかり評価社会ですので、サービスの口コミも点数だけでなくユーザーの評論などみんなが気にしてますね。ユーザー心理としての前提が“信じていない”ので。

「ぜひ日本でも取り入れてほしい」圧倒的使いやすさとアイデア

日比:最後に、今注目しているサービスについて教えてください。

陳暁:まだ日本に入っていないサービスでいえば、教育系と医療系のサービスが熱いと思います。いまこの領域は中国ですごく伸びています。

日本でも、先生と生徒、お医者さんと患者さんなどがコミュニケーションをとることができるC to C のノウハウ共有サービスがはじまっていますが、中国のサービスでは同じようなことが普及し始めています。動画サイトやECサイトは割と日本でも研究され始めてますが、それ以外はまだまだ知られていません。

日本の企業は、とくにベンチャーなどアメリカのサービスは参考にして例にあげたりしますが、中国のサービスは情報が日本語で探せないこともありなかなか知られていないものが多いです。

中国のサービスの良いと思うところは、対象者が多岐にわたるので、UXがとてもわかりやすかったり、あからさまに便利な機能が付いていたり、構造がシンプルだったりします。

例えば最近話題の知恵袋サービスだと、一定の難易度のある質問は課金制だったりコミュニティーが作れたり。たしかに!とうなるアイデアの宝庫です。

日比:確かに中国には、すさまじい数のサービスがあるようですね。それだけ数があり、競争が激しいから質の高いものが生まれるのでしょうか。中国と日本で、生まれてくるサービスの質や数に違いが生まれている理由は何でしょうか。

陳暁:人口の多さもあると思いますし、加えて「ユーザーの心理的参入障壁の無さ」は理由として挙げられると思います。日本だと、新しいサービスは抵抗があったりするじゃないですか。中国のユーザーには新しいサービスを使うことに対する抵抗がないという点が、日本と違うと思います。

日比:とりあえず一回使ってみる、という姿勢があるということでしょうか?

陳暁:そうですね。日本だとユーザー心理が割と守りに入っているように思いますが、この点中国はまさに成長期にあり、中国の人たちも「成長するぞ」という攻めのマインドを持っている。だから、新しいものを取り入れていかないと自分も置いていかれるという感覚が強いのだと感じます。

2008年の北京オリンピック、2010年の上海万博で「世界一をとる視野」が醸成され、13年頃からITサービスも普及しインターネットを使うことに慣れた若い世代が新しいサービスをどんどんつくりだしていった。さらにそういった若手に対して、「アイデアがよければ、どんどん投資をする」という回転の早いPDCAが中国の成長を加速させたのではないでしょうか。

私はいま「バブル」と言われている中国の動きは、決して“終わる”ものではないと考えています。日頃使っているソフト産業に限らず、タイ、インドネシアなどの近隣諸国からアフリカまで様々な場所にサービスの枠を広げていますし、途上国の国々に対しては膨大なインフラ投資もおこなっている。そうやって見えないところで気づけばチャイナ資本に囲まれている未来が近づいているような状況がつくりだされている最中にあります。

ですが日本企業はこういった中国の伸びを一過性のバブルと認識し、短期的な対応しかしていないように感じます。だからこそ認識のギャップを少しでも埋め、より本腰を入れて中国に向き合うためのサポートをしていきたいと思っています。

日比朝子
ライター
日比朝子

インフルエンサーラボ副編集長 兼 コミュニティマネージャー / 個人が自分の強みを発揮して、輝ける社会にする!もっと個性豊かな人たちが発信力を持つことで、社会は面白くなると思う。インフルエンサーラボでは、インタビューを通して、インフルエンサーの魅力を伝えていきます。

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